大内氏
私たち伊予銀行は、四国の愛媛県を地盤としている地方銀行です。特徴としては、瀬戸内圏域を中心とした13都府県に広域店舗ネットワークを有しており、海外にも、シンガポール支店、香港・上海に駐在員事務所などを展開し、支援体制を整えていることが1つ。また、愛媛県今治市は、世界の船主が集積する「日本最大の海事都市」と呼ばれており、日本国内だけでなく世界的にも大きな存在であるため、我々も船舶の建造資金を中心とした融資「シップファイナンス」に力を入れており、ともに発展してきた歴史があります。2022年10月には持株会社体制へと移行し、グループが一体となって事業展開しているところです。
大内氏
一般のお客さまの窓口となる営業店では先駆けてBPR(Business Process Re-engineering/業務改革)を進めていましたが、その一方で、本部ではまだまだ業務の効率化が進んでいませんでした。営業店側では、スマートフォンでお手続きができるお客さま向けのアプリを開発したり、店舗体系の見直しなど、さまざまな施策に取り組み、効率化、生産性向上が進んでいました。お客さまとの接点の多様化や利便性を高めることを優先していましたので、その時点では本部側はまだ業務の抜本的な見直しには着手できていませんでした。
そういった中で2017年12月より、いよいよ本部の業務効率化を目指すべく新たな推進チームを立ち上げ、業務時間の削減につながる取り組みや、ペーパーレス化、ITシステムの導入検討などが始まりました。ただ、当時はRPA(Robotic Process Automation)による業務の自動化を中心にスタートしたものの、取組みを進める中で、既存の業務をただ自動化するだけでは限界もあり、また得られる効果も十分ではないことがわかってきました。
伊予銀行 二宮氏(左)と大内氏(右)
たとえば紙の書類を使っている業務だと、インプット情報がデータではないため、どうしても自動化には不向きとなります。そのため、RPAをさらに活用していくためには、もっと手前の段階で業務を電子化することが重要であることに気付きました。そこでワークフローエンジンを自社開発の上、紙の申請フローをどんどん電子化し、ペーパーレス化を進めたのですが、それでも自分たちの努力だけでは紙をなくせない業務もありました。契約業務や他社からの帳票を用いる業務、名刺などです。そのなかでも契約書は取扱件数の多い書類でしたから、これをまずは電子化できないだろうか、という議論が始まりました。
大内氏
契約書をはじめ大量の保存書類を部署ごとに金庫や倉庫などで保管していましたから、保管作業や点検作業の負担はもちろん、保管スペースなどコスト面の問題もありました。さらに、書類への押印作業や、契約の相手方への郵送作業など、目に見えにくいコストや時間がかかっていることも認識していましたので、そこは電子化を進めるべき大きな理由にもなっていました。
大内氏
実は社内での運用方法やシステム面の課題もあり、契約書の電子化をすぐに進めることができずにいました。そんななか、社内外の役員全員の署名と捺印に多大な時間と手間をかけていた取締役会の議事録を電子化できないか、という話が持ち上がりました。
他行でも取締役会議事録に使用している実例があることは耳にしていましたし、取締役会議事録なら利用者も限られているので、スモールスタートもしやすい。通常の契約書を電子化するのがまだ難しいのであれば、その前に取締役会議事録の電子化で活用できないか、ということで導入が始まりました。
大内氏
他の電子契約サービスや、議事録専用の電子化サービスなど7、8種類を比較検討しましたが、SMBCクラウドサインはSMBCグループにはもちろんのこと、他の都市銀行や地方銀行を含め、金融機関における採用実績が最も多かったのが理由です。そういった信頼性の高さ、法的な要件をしっかり満たしていることなども決め手になりました。
また、当時は複数のベンダーとやり取りしながら導入検討を進めていましたが、SMBCクラウドサインはその中でも特に対応が早かったですね。質問に対する回答や情報提供のレスポンスが早く、またデモ環境を実際に触れてみたときにシンプルで使いやすいと感じたことも決め手のひとつでした。
大内氏
導入時は、法的な要件の確認を重点的に行いました。最終的にオンラインで登記できるのか、メールアドレスを使った運用で議事録としての有効性が保てるのか、といった点については、法務局や司法書士の先生にも確認を行い、我々自身も改めて勉強してしっかり準備しましたね。
実際に使っていただく社内外の役員の方々からは、法的な有効性や、運用の流れについて、様々なご意見や、一部では不安を感じるといった声もありました。大事な書類にハンコを押すという文化は根強いものがあるので、そうした不安を払拭するために、秘書室と協力して説明会を開きました。
電子化するとどう変わるのか、実際の画面がどうなっていて、どういう手順で操作すればいいかなどを説明するための資料を作成したうえで、SMBCクラウドサインのWebサイトにあるQ&Aや動画も活用して時間をかけて説明しました。まずは、実際に利用していただく方々に理解、納得してもらうところで一番苦労したように思います。
大内氏
紙の議事録のときには、取締役会が終わった後、秘書室が議事録をWordで作成して製本します。関連資料も入れるとそれなりの資料になりますが、それを社内の役員や、社外の取締役の方にも押印してもらいます。社外の取締役については全員が愛媛県にいらっしゃるわけではありませんので、愛媛に来られる時に押印してもらったり、その予定がない場合は郵送での押印作業で対応していました。押印が必要な対象者は10名以上いますので、全員の捺印が終わるまで1カ月から2ヵ月近くかかることもありました。
SMBCクラウドサインの導入以降は、Wordで議事録を作成するのは従来通りですが、その後はSMBCクラウドサインにアップロードして、取締役の皆さんのメールアドレス宛に送信しています。紙資料のやり取りもなく、各自のデバイス上で内容を確認して合意してもらうだけですので、早ければ1週間から2週間程度あれば完了することも可能になりました。
取締役会議事録を担当する秘書室では、誰にいつ捺印してもらうのか、誰に郵送しなければならないか、といった管理負担が低減されましたし、書類が今どこにあってどういう状況なのかもSMBCクラウドサイン上で見える化され、一元管理できるようになったことで負担は大幅に少なくなっています。倉庫などの保管スペースも確保でき、目には見えませんが間接的なコスト削減にもつながっていますし、法務局へのオンラインでの登記申請も無事に対応できています。
大内氏
導入する前は懐疑的というか、利用の仕方に不安を感じる方もいましたが、いざ導入してみると、操作方法に関する課題は意外と少なく、当初考えていた以上に早く受け入れてもらえたと思います。SMBCクラウドサインは、画面を見れば何をすればいいのかわかる直感的な作りになっていますので、そのおかげで混乱なく利用してもらっていると感じます。
大内氏
疑問点があったときには細かいことでもすぐに電話やメールで相談しました。議事録での活用について急ぎ準備していくなかで、たびたびSMBCクラウドサインの担当の方に質問しましたが、その都度レスポンス良く対応していただいたのは本当にありがたかったです。
大内氏
取締役会の議事録で使うのと同時に、その他の会議体の議事録でも導入しました。もちろん当初目的としていた契約書にも活用を広げていきたいと思いますので、引き続きその運用フローの検討を進めたいと思います。まずは当社グループ内でやりとりする契約書から始めて、そこから一般の法人など対外的なお客さまとの契約書にも少しずつ広げていきたいですね。
二宮氏
銀行は紙と印鑑の文化が根強いイメージがすごくあります。でも、SMBCクラウドサインを導入することで、紙も押印もどんどん減らしていける時代になりました。最近は外部のお取引先さまから電子契約したいと相談されることが増えてきていますので、そういったところから使い始めたいですし、少しずつ電子化していくことで他の企業にも波及して、一段と電子契約が拡大する要因にもなるだろうと思っています。
大内氏
電子契約を導入する一般的なメリットの一つに印紙税の削減などの直接的なコストメリットがあると思います。ただ、今回私たちがSMBCクラウドサインを導入するにあたっては、取締役会議事録はもともと印紙が不要なこともあり、直接的なコスト削減は目的にしていませんでした。しかしそれでも、目に見えにくい作業にかかっていた時間の節約、すなわち生産性向上という意味では、非常に大きな効果があると実感しています。
電子化に懐疑的だった人も、SMBCクラウドサインを実際に使ってもらうとその便利さを理解してもらえます。新しいことにチャレンジすることでデジタルを活用するというマインドが少しずつ大きくなり、別のシステム導入につながるきっかけになるかもしれません。デジタルを活用して生産性を上げるのは世の中の流れで、そこに積極的に取り組まなければ企業としての力、本来やるべき仕事の力が落ちていきます。社員の意識を変えるため、小さなことからでも積極的にチャレンジしていくことが大切ではないでしょうか。
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