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自治体初の地方債発行における電子契約導入

~神戸市と野村證券の前例のない取り組みが実を結ぶ~

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神戸市 行財政局 財務課 財務課長 安居 大樹氏 行財政局 財務課 係長 森田 暁氏 行財政局 財務課 佐藤 優斗氏

野村證券株式会社 キャピタルマーケット部 DCM2課 次長兼DCM2課長 服部 了磨氏 キャピタルマーケット部 DCM2課 関口 直人氏

神戸市が発行する市場公募債(市債)発行業務で、作業時間・管理コストが課題に

野村證券の協力のもと債券引受契約の電子化を実現

電子化で契約業務の大幅な省力化と、契約締結のスピードアップを実感

証券会社との債券引受契約で電子契約を導入

神戸市様は自治体のなかでも電子化に積極的です。その目的と、取り組みの例を改めて教えてください。

神戸市 安居氏
目的は、電子化によって市民サービスを向上させていくことが1つ、もう1つは職員の単純な庁内業務をデジタルに置き換えて、市民サービスを高められるところに重点的に人材をシフトしていくことです。それらの取り組みを行財政局と企画調整局が中心となり進めています。

市民サービスの例としては、「e-KOBE」という電子申請のプラットフォームを構築し、市役所に足を運ばなくても各種手続きができるようにしたことが挙げられます。また、今回のテーマである電子契約サービスを導入して、紙の契約書であったような製本、押印、郵送、返送といったような手間をなくし、省力化を図っています。

財務課ではどういった業務をされているのでしょうか。

神戸市 安居氏
大きくは4つほどあります。メインの業務である予算編成、市役所と議会との窓口業務、国に対する予算や制度などの要望の取りまとめのほか、市債の発行業務もあります。神戸市が公共工事などの事業を行うための資金調達を目的に市債を発行し、証券会社を通じて投資家に購入してもらう、という形です。SMBCクラウドサインは、その市債発行に関わる債券引受契約で証券会社との間で利用し始めました。

神戸市 行財政局 財務課の安居氏(左)と森田氏(右)

債券引受契約でSMBCクラウドサインを導入した背景について教えていただけますか。

神戸市 安居氏
神戸市としてSMBCクラウドサインの本格運用を開始したのが2022年6月です。そうした契約書の電子化に向けた全庁的な動きから、財務課でも電子契約を検討することになりました。一方で私どもは以前から市債発行において先進的な取り組みをしてきています。たとえば持続可能な社会に向けた資金の調達のために、2021年度には「神戸市SDGs債」を、2023年1月には「こうべSDGs市民債」をそれぞれ発行しています。電子契約の利用は、そうした先進的な取り組みの流れの1つでもあります。

ただ、財務課で扱う契約は種類としてはあまり多くありません。そのため、まずは市債を管理するシステムの保守契約、次に市債の発行業務における債券引受契約にも、SMBCクラウドサインを利用し、契約を電子化しました。

市債発行業務において紙の契約書を使うことによる課題感はありましたか。

神戸市 安居氏
書類作成の手間がかかるだけでなく、そのための管理コストも課題でした。相手方に作成・押印したものを郵送いただき、それに押印して送り直す、というところで時間のロスも大きかったですし、これを電子化することで契約の相手方にとってもメリットがあるのではないかと考えました。

国内で前例のない電子契約実現に野村證券が尽力

債券引受契約で電子契約サービスを利用する際に苦労したこと、工夫したことなどはあるでしょうか。

神戸市 森田氏
国内の多くの自治体が地方債を発行していますが、その債券引受契約を電子契約サービスで行っている前例がありませんでした。海外では同様の契約を電子化している事例はあるものの、国内にはありません。債券引受契約の電子化は、おそらくできないことはない。でも実際に電子契約で締結した経験のある人がいない、という状況でした。

しかし、野村證券の方で法務的な観点からも可能かどうかを確認するなど、さまざまな調整をしていただいたおかげで準備が整い、初めて私どもが債券引受契約に電子契約サービスを導入することができました。神戸市としては、すでに他の部課で行っていた契約を参考に電子化のルールを適用するだけでしたから、苦労や工夫はあまりしなくて済んだのですが、野村證券の方でこれまで前例がなかったものをどうクリアしていくか、というところで苦労されたのではないかと思います。

野村證券 服部氏
我々としても債券引受契約の電子化は初めての取り組みでした。法務部のほか、規程や契約を管理している複数の部署と話し合いながら進めてきたわけですが、たしかにその社内調整は容易ではなかったように思います。

初めての事例だったこと、神戸市のこの先進的な取り組みが他の団体、セクターにも今後広がっていく可能性があることなどから、最初にしっかり課題を整理しておく必要があると考え、社内フローやセキュリティ面での対応を含め、慎重を期して確認に時間をかけたところもあります。

ただ、当社としても紙の契約書では調印や郵送などの業務が発生し、かなり煩雑な作業になっていましたから、そうした業務から解放されるメリットは決して小さくありません。役員からも「時代に沿った取り組みなので、ぜひとも前に進めるべき」と後押ししてもらい、前向きに議論して実現にこぎつけることができました。

契約は1週間から1日に短縮、将来的に年間3,200時間の作業削減へ

電子化したことによる効果を実感しているところはありますか。

神戸市 安居氏
債券引受契約への初めての導入ということで、これが全庁的に広がっていけば契約全般に関わる作業時間の縮減、コスト低減ができるだろうと思っています。

作業時間やコストだけでなく、いずれは契約書の保管場所の削減にもつながるはずです。神戸市としては、2025年度に契約の8割を電子契約に移行していく目標を掲げていますが、試算によると、それによって作業時間が年間3,200時間削減されると見込んでいます。庁内のさまざまな契約の電子化を積み上げていけば、おそらくその通りになるだろうと予感しています。

神戸市 森田氏
以前は野村證券での業務も含めて契約締結に1週間ほどかかっていましたが、電子化したことでその日のうちに両者の調印まで完了しました。スピードはものすごくアップしましたね。SMBCクラウドサインを操作する担当者は本当にクリックしていくだけですので、事務作業も軽減されたのではないかと思います。

債券引受契約についてはもともと印紙税がかからないので直接的なコスト削減効果はないのですが、他の種類の契約では、電子化によって取引相手となる企業の方で印紙税の負担が不要になります。その意味で電子化を全庁的に広げるメリットは大きいと感じているところです。

野村證券 服部氏
社内には当然ながら印鑑が限られた数しかありませんので、その手配も含め社内手続きにはどうしても時間がかかってしまいます。しかし電子化によってクリックだけでスムーズに終わるようになったということで、担当者も開口一番「すごく便利」と話していました。テレワーク中でも、スマートフォンでも契約の承認などをこなせるので非常に使い勝手がいいと。作業時間の短縮にもたしかにつながっています。

野村證券株式会社 キャピタルマーケット部 服部氏

そもそも当社内の契約業務は、神戸市に関わるもの以外にもたくさんあります。毎日大量の契約書を処理しなければならず、紙の契約書だと深夜まで調印・郵送の作業にかかりきりになる事態も発生しがちで、一部でも電子化によって省力化できたことは、今後に向けて明るい要素になったと感じているところです。こうした電子契約の取り組みが他の自治体などにも広がっていくことを期待しています。

民間企業側の受け入れ体制の整備、他自治体の導入姿勢が課題

契約の電子化8割に向けて課題になりそうなところはあるでしょうか。

神戸市 森田氏
契約の相手方となる企業の方で、電子契約を受け入れる体制が整っていないことがある、という点が課題です。先ほどシステムの保守契約にもSMBCクラウドサインを導入したとお話ししましたが、そのケースでは相手方がIT系企業でデジタルに対する抵抗感がなかったためにすんなり受け入れていただけました。しかし、そうではない業界の企業ですとなかなか進みにくいのが実情です。

また、債券引受契約の電子化も、おそらく他の自治体で実現しているところはまだないと思うのですが、それについても各自治体が電子契約に取り組む体制ができていないのが理由ではないかと思います。

今後SMBCクラウドサインの活用をどのように広げていきたいと考えていますか。

神戸市 安居氏
私どもの部署について言えば、契約の種類が多くはありませんので、わりとすぐにほとんど全ての契約を電子化できるだろうと思っています。森田が申し上げた通り、相手方によっては電子契約に対応できないところもあるのですが、それも時間とともに自然と導入が広がっていくのではないかと考えています。

物品購入などの契約を取りまとめている部署などでも順次電子契約を導入していくと聞いています。2025年度の電子化8割を確実に達成するべく、庁内全体で積極的な導入を進めていきたいですね。

神戸市 森田氏
今回野村證券と債券引受契約で導入して特に問題となるところはありませんでしたので、これからは神戸市が発行する市債については基本的にすべて電子契約で進めていきたいですね。

これからSMBCクラウドサインを導入したい、もっと活用したいと考えている企業・自治体に向けてメッセージをいただければ。

神戸市 安居氏
手間や作業時間を削減し、契約締結をスピードアップできるという点で、電子契約は非常に有効な手法だと実感しています。債券引受契約に限らず、もっと電子化しやすい契約もあると思います。ぜひ自治体の側から積極的に導入して、電子契約がスタンダードになるよう進めていただきたいと思いますし、私どももその先導役みたいな形で助けになる情報を発信していければいいなと思っています。

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